創薬のこと

意外な電話

忘れたころに その電話は来た。

かつての同僚の一人から、T製薬での電気工事の経緯

が知りたいとのこと。

仕様書や、先方へ提出した 電気工事の仕様と、実際

が大きく違うとのこと。

旧設備を廃棄して、場所移動などをしたとき 電気工事

のやりなおしか、旧設備の工事流用があったのではと

思うが、7年前のことで メールの記録も、すでに消去。

手がかりは、仕様書のみであった。

9月1日付けで、風の便りどおり T薬品の関連会社で

ある、W薬品に 10名が移籍して、事業を継続している

とのことで、噂は 事実であることは確認できた。

まずは、めでたしめでたし というところかな・・・

開発は、人がするもの というのを身に浸みて感じて

いるだろうなあ と 思わずにはいられない。

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インシリコの手法

インシリコ手法 と 臨床試験のギャップ

インシリコとは、化合物合成を全て計算機の中の仮想空間
で設計、ターゲットにはまる化合物の候補を探す手法。

http://www.senri-lc.co.jp/slf/cluster/current/research/Inoue05111501_P.ppt
http://www.insilicobiology.co.jp/ISB_Protocol.htm
http://www.pd-fams.com/ja/iss_mbk.html

歴史は15年以上あるが、問題も多い手法と聞く。
合成の手法までは 答えを出してくれないのも大きな課題。

この時、問題なのが 人間や生物の体のしくみである タン
バク-タンパク反応を どうシミュレートするか?

DNAの配列が解明され、そのDNAが作り出すタンパクの
立体構造がわかり 薬をどう設計すればいいか、という
ことが 明らかにできる環境が整ってきたが 次の問題も。

二次元構造から三次元変換にも 実は問題があるらしい。
液体の中、タンパクの中では 電子の相互作用で3D構造
も変化し、正確な計算機再現は 誤差があるとのこと。

計算機の中で、この仕組みを解明し 役立つ化合物を設計
するだけでは 解まで行き着かない。臨床試験に代わるも
のが不可欠。

日本でも、この統合取り組みが始まるのも 
時間の問題だと
我々は推定している。

創薬プロセスを2年短縮 24ヶ月で臨床まで持ち込める
ことを実証できれば 日本でもインシリコ-コンビケム-
HTS-毒性試験-化学修飾-再HTS というサイクル
が廻りだすのだが・・日本では部門間の壁も高いが。

日本発というのが存在しないHTS創薬の手法に 新しい芽が
出て欲しいと思っている

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コンビケムとHTS

遅ればせながら

最近 同類の話が あちこちで。
それは、従来タイプのランダムスクリーニングからの脱却。

10年くらい前、世の中こんなに進んでいるんだあ と感心
した 化合物の計算機による設計とコンビケムの関係。


数百のリード化合物をベースに、化学修飾して自動合成
というのが コンビケムの世界。

薬の候補物質を、天然生成物中心の数十万種から この
合成中心で、数百万から一千万とも言われる候補物質に
拡大。

これを手作業でふるいにかけるのは、物理的に困難であ
るから、機械で自動的にやらせようというのが、HTS。
基本は、当たるも八卦、当たらぬも八卦の世界。

実際、HTSから薬に行き着くのは 製薬企業では2年から
3年に一件が 実績らしい。
理由は、HTSで見つかっても 生物にとっては毒が大半・・

なぜ、そうなのか ということが分かってはいたが、共通
認識になって来たのは最近である。

DNAの配列が解明され、そのDNAが作り出すタンパクの
立体構造がわかり 薬をどう設計すればいいか、という
ことが 明らかにできる環境が整ってきたのが、現状。

リード化合物がHTSで見つかってから、実際の薬にする
には、この知見が不可欠になりつつある。

計算機の中で、この仕組みを解明し 役立つ化合物を設計
するというのが インシリコ と言われる手法らしい。
米国のNIHで導入した トータルシステムが事例かと思う。

これをうまく運用している 代表的会社では、6ヶ月で候補
物質を探し出し、創薬プロセスを2年短縮 24ヶ月で臨床
まで持ち込めているとのこと。

次回以降は、この辺を詳しく解説してみようと思っている。
日本で最初に このシステムを成功させれば、新規事業
としては、有望と思う 今日この頃。

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分子生物学会に展示して

分子生物学会に展示して

まず、学会の規模にビックリ、国際学会はスゴイ。
多分、1日に1万人くらいの研究者が参加のように見える。

京都の国際会議場は 四方が山に囲まれた公園の中。
地下鉄の終点で 楽に乗れるはずなのに大混雑。

展示会場も、BioExpoなみに充実。
ポスター展示発表も盛んで、感心してしまった。

残念ながら、ビジネスに直結は数件であったが、研究者は
近い将来の大事なお客さまなので、遅効性だが 効果は
期待できるのではないだろうか・・

地道な研究者
の発表の場なので、チャンスと思って巡回。
ランチョンセミナーが盛んで、昼休み無しでみんな勉強!

たしかに、会場内にはろくな食事場所はなく、弁当持参が
正解であった。
続きは、また あとで書こう

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HTS,DDSの動向

DDS (Drug Discovery Sysytem)の動向

最近、ユーザの引き合いを注意深く見ていると、ここ
数年 HTSを使ったDDSに変化があるように見える。

一つ目は、ランダムスクリーニングからの脱却。
二つ目は、HTSの精度向上と情報量の拡大。

三つ目は、極端な自動化から 半自動への移行。

大きな流れとして、世の中にある数百万の化合物から
薬に 簡単に行き着くものが 出尽くしたのではないか?

日本の厚生労働省が求める 安全性試験では、数十万

人に1名の割合で発生する事故も 基本的には許さない。

HTSで得られた新薬の候補物質で、この試験によって
お蔵入りになったものが 大半と聞く。

これを避けるため、HTSを1種の手法で行うのではなく
各種の手法を組み併せて、いわゆるハイコンテンツの
HTSを実施する研究所が 多くなっているようだ。

また、日本ではHTSの手法を開発する部門と、HTSを
実施する部門と さらに結果をフィードバックして化合物
を修飾して 改善する化合物部門が、独立していること
が多い。

DDSでは、これらがどうあるべきかという全体の戦略検討
なしに、各部門最適で創薬を実施。
結果、HTSを機械化しようとしても 部分的にしか自動化
できない。
この反映が、半自動のHTSが増加している背景と思う。

また、より自動化に向かない細胞を使った大規模HTSが
まだ、実用化できていない現状、これらは小規模な実験
の積み上げしか 現実的な方法がないのかもしれない。

ここに、ビジネスチャンスがあるのかな・・

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HTS装置の必要機器 詳細10

HTS装置に必要な機器 詳細10

蛍光計測

新薬候補の探し方 の項で述べたように、薬が効果が
あったか否か、反応の有無を 蛍光色素標識で測る。

おおまかには、3種類の蛍光計測の手法がある。
1、蛍光色素標識の酵素を使い標識する方法
2、蛍光を増幅するしくみを応用した方法
3、蛍光物質から発せられる蛍光が分子量に応じて異
  なった偏光を示すという特性に基づいた測定方法

スクリーニング試薬と深い関係があるので 下記が良い
勉強サイト

http://www.perkinelmer.co.jp/products_ls/assays_index.html
http://www.jp.amershambiosciences.com/

これらの蛍光法をターゲットとした計測器には 前述
のもの以外にも多種・多用のものが市場には存在。

perkinelmer  http://www.perkinelmer.co.jp/
Tecan    http://www.tecan.co.jp/infinite200.htm
BMG     http://www.bmglabtech.com/japan/
moleculardevices http://www.moleculardevices.com/pages/instruments/analyst_gt.html
大日本製薬  http://labopro.ds-pharma.co.jp/htm/exhibition/exhibition.html

次回は、発光計測法の解説

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HTS装置の必要機器 詳細9

しばらく、計測器を解説。

新薬候補の探し方 の項で述べたように、薬が効果が
あったか否か、反応の有無を 計測手段で計る。

一般的な HTSで使われる計測手法には 光学的な
方法が 大半であり、電気生理を計測したり クロマ
トグラフィで計測の例は少ない。

また、近年は インセルアナライザなるものや、顕微
鏡画像で細胞形態の変化を観察して、HTSを行う例
も、少数派であるが あることはある。

今回は光学的な手法の代表、吸光度計測について説明。
安価なものは100万円台からあり、高額なものでも
1,000万を超えるものはないので、業界では最も
普及している。多分、国内に1万台はあると 思う。

原理自体は簡便で、特定の色素の量を 光の特定波長
の吸収度を測ることで、濃度を定量する。

従って、光源と 特定波長を通す光学フィルター、検
出器で 比較的簡単に実現できる。

測れる濃度は、おおよそ103 くらいのレンジ。
光の波長としては可視光のものが大半。理由は、目で
反応が確認できるからと 思う。

吸光度計測結果のことを、業界ではアブソーバンス幾ら
とかいう言い方が多いが、これは吸光度を 対数表現
したもの。試薬との関連は下記を参考に。

http://www.dojindo.co.jp/letterj/098/commercial_03.html
http://www.funakoshi.co.jp/h_news/0508/050801_OZBs.php
http://www.cosmobio.co.jp/product/products_EBT_20050228.asp

次回は、蛍光法の解説

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システム設計者の品質

今回は、計測器ではなく 装置全体のシステム設計。

システム設計のポイントは、ユーザの最大満足を最小
のコストとソフト負荷で満足させることである。

最大満足には、目的のスクリーニングが可能なこと
以外に、止まらない とか プログラムが容易とか
操作が簡便であるとか、精度がいいとかが コスト以
外に含まれる。

かつ、かっこ良く 使っていることに誇りが持てると
いうことも重要らしい。
HTS装置の大半が 海外製であるのには、この最後の
項目は 拝外傾向のある製薬企業ではかなり有効らしい。

これを、設計する側から眺めてみると、かなり矛盾す
る項目が多く、苦労する。

価格は、結局は購入する側が決めるのであるから、ユ
ーザが購入を決めるであろう価格より 高ければ、売
れない=他社を購入。

そのような前提で、著者のシステム設計の哲学は 最
適バランスと信じている。
ある機能をハードで実現するか、ソフトで実現するか
また その仕様を何処へ落とし込むかは システム設
計者にとっては、最も 頭を使うところである。

実用上必要条件を満足し、十分の機能を提供する仕様
を決めることができれば、システム設計は成功。

言い方を変えると、同じ機能・性能を実現する手段は
いくらでも考えられるのあるから、決めるということ
ができるかどうかが システム設計者に求められる最
大の資質ということになる。

実は これが出来る人は少ないのが現実。決めたら責
任を持たねばならないが、傍観者・評論家が多くて、
DRでも ひとごと という態度の人が多い昨今である。

今後、しばらく システム設計の手順について備忘録。
①作業分析=システムのなすべき仕事を 分析
②機能分担=システムの構成&実現方式検討(VE含む)
③構想設計=機能分担を 現実の姿に書いてみる
④シミュレーション=バーチャルマシンを動作させてみる
⑤各サブシステムの設計=各部で①~④を実施
⑥全体をシミュレーション動作させ、問題がないか評価
(使いやすさ・造りやすさ・コスト・機能・性能・保守性など)
⑦実際の設計にとりかかる=⑥まで終わらない限り着手×

この手法は、前の会社にで働いていたとき、T?T?向け
のマイコン化を開発したときに 会得したもの。
この22年は、前の会社での蓄積を吐き出すだけだった
のかもしれないな・・生化学の勉強は今の会社でだけど

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HTS装置に必要な機器 詳細8

セルウォッシャ

新薬候補の探し方 CellBase の項で述べた
手法で、最近要望の多い機構、CellWasher。

細胞を使ったスクリーニングでは、細胞をプレートに
撒いてから 数時間~数日培養をして、細胞が元気に
なってから 薬の候補物質をテストする。

この時、細胞を培養する環境として 培地と言われる
栄養素の入った液体の中で 細胞は飼う。

この培地は、一般に1日~2日くらいで 栄養が枯渇
するとともに、細胞の生命活動の結果 PHが変化し
、細胞にとって 環境悪化が進行する。

また、細胞には 浮遊性(血球由来が多い)と付着性
のものがあるが、プレートで培養してスクリーニング
に使う細胞の大半は 付着性が多い。
つまり、試験管の壁にくっついて 元気に増殖できる。

この時間とともに劣化する環境を改善するのに、培地
交換という作業を 定期的に実施する必要がある。
この時、付着した細胞にダメージを与えないで 培地
を交換するのがポイント。

しかし、増殖した細胞の周りには コラーゲンなどの
ブヨブヨしたものがあって、液体を完全に吸引しよう
とすると、これを一緒に吸引して 細胞を剥がしてし
まうことがある。

さらに、培地を供給するときに 液体を勢い良く流し
込むと、細胞がびっくりして ダメージを与える。
ということで、この培地の交換を マイルドに実施
して、結果として細胞を 上手に洗うという機構が
求められて来た。

ELISA用のプレートウォッシャは、この作業を実
施できるが、ジャブジャブ洗うのが得意で、マイルド
に洗うのは不得手。

ということで、分注機と同じ制御性を持った 吸引専
用と吐出専用の 各分注ヘッドを持った機構が必要と
なる。ちょっと大げさな装置になるが・・

これを購入できるお客様は、日本でも1~2社くらい
と思う。
やはり、お客様の要望は ビジネスとは 程遠い。

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HTS装置に必要な機器 詳細7

プレートウォッシャ

新薬候補の探し方 ELISA の項で述べた手法
で、必要不可欠な機構。

色素標識を組み込んだ酵素と 抗原または抗体とが
結合して、反応の有無を検出する方式の場合、結合
しなかった余剰の色素標識を組み込んだ酵素を 分
離除去しないと、結合した量を測れない。

この操作を B/F分離と呼ぶ。B=Bound
F=Free の略である。
プレートウォッシャは、Freeの部分を洗い流す。
文字通りで、試験管集合体プレートをジャブジャブ
洗い流す。

Boundされた部分は、試験管の壁に貼り付いて
いるので、かなり乱暴に洗っても大丈夫。

実際には、プレートのウェル数に応じた液体吸引の
ノズルと、洗浄液を供給するノズルを持つ ウォッ
シュヘッド部と、廃液タンク、洗浄液タンク、液体
供給ポンプ、廃液吸引ポンプなどで 構成している。

これも、後日 写真をUP予定。

いかにきれいに洗い流すか、時間をかけず作業でき
るかが 勝負だが、CellWasher と呼ば
れる用途の場合は、かなり 要求仕様が異なる。

次回は、このCellWasher の解説を予定

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